時の羅針盤・245
時の羅針盤・245
燃焼する
高橋佳子
熱とエネルギーの季節
今、この原稿を書いている7月上旬の段階で、すでに東京の気温は36度に達しています。
さえぎるもののない陽光の強さは、容赦なく人々に影響を与えます。人々の集中力を奪い、時には熱中症を引き起こすことで、生命の危険さえもたらしかねないのです。
それだけに皆さんには、この暑い日々の中では、特に健康に留意し、予期せぬアクシデントに至ることを極力避けられるように配慮していただければと思います。
しかし、この灼熱の季節が私たちにとって過酷な環境となったとしても、ただ危険な意味しかないのかと言えば、そうではありません。私たちに注意喚起を与える一方で、それだけの何かを世界にもたらす季節でもあるということです。
夏という季節が世界にもたらすもの──。それは、間違いなく「熱」であり、そして「エネルギー」でしょう。
少なくとも私たちは、夏になると「熱」を意識し、「エネルギー」があふれていることを感じるのではないでしょうか。そして、それは、私たちに新たな生き方、次なる生き方を呼びかけ(*1)ているのです。
私たちの生き方が進化するとき、それは、それまでの生き方に比べると、大きな熱、大きなエネルギーが蓄えられているときです。
物質の世界で新たな化学反応が起こるとき、分子レベルでエネルギーが蓄えられていることが知られています。そのエネルギーによって、電子が新たな軌道にジャンプすることで、それまでとは異なる結合が生まれるのです。
私たちの生き方も、同じではないでしょうか。
私たちのそれぞれの生き方に「熱」と「エネルギー」を蓄えることによって、私たちは新たな生き方、次なる生き方への飛躍を準備できるのです。
完全燃焼する
では、次なる生き方への飛躍とは、どのようなものなのでしょうか。
私たちには、誰の中にもその人だけの「いのち」が息づいています。それは、謳歌すべき「いのち」であり、その人が生まれてきた理由、生きている意味を指し示す、人生の目的と言ってもよいものです。それを十全に生きることを、誰もが願って生まれてきたのです。
私たちがめざす次なる生き方への飛躍は、いつでもこの「いのち」への肉薄にほかなりません。1人ひとりが抱いている人生の目的、人生の青写真に迫る一歩を踏み出すという歩みなのです。
そして、1人ひとりに蔵された、この「いのち」を十全に生きることを、私たちは「燃焼する」という言葉で表します。私たちが抱いている資質、可能性を全開して発揮することを、「完全燃焼する」と言うこともあります。
私たちの中には、燃え立つことなくしては現れない力があります。燃焼し尽くすことによって、初めて結晶化する現実があるのです。
私たちが人生の中で本当に大切にすべきものの多くは、そういうものではないでしょうか。人生において私たちが果たさなければならない役割は、次元を引き上げる「熱」と「エネルギー」がなければ、成就できないものであるということなのです。
ぜひ今月、灼熱の季節だからこそ、私たちが抱いている自分だけの「いのち」を燃焼させることに向かってゆきたいと思います。
菩提心に燃える
私たちは今、「グローバル・ジェネシスプロジェクト研鑽」(*2)を中心に、GLA共同体を挙げて「菩提心(ぼだいしん)チャレンジ」(*3)に取り組んでいます。
昨年、青年塾生たち(*4)が先駆けとして歩んだ菩提心発掘の歩みを、1万5000人に及ぶ会員が菩提心を生きて、私たちの中に眠っている魂の力を引き出そうとしています。もし、それが叶うならば、どれほどの新たな力、新たな現実が生まれることでしょうか。
夏の呼びかけを受けて、それぞれの菩提心に燃える1年をぜひ過ごしてみていただきたいと思います。その燃え立つ時は、これまでになかった新たな人生の次元を私たちにもたらすものとなるでしょう。その新たな次元を一緒に拓いてゆこうではありませんか。
2024.7.25
〈編集部註〉
*1 呼びかけ
1つ1つの出会いや出来事は、「偶然・たまたま」私たちの許にやってきたのではありません。それらは、必然があって、理由があって、意味があって、私たちのところにやってきたのです。このような魂の感覚を呼び起こし、魂の重心を抱くとき、私たちは、たとえ一見、ネガティブな事態であっても、「この出会い、この出来事は、私に何を呼びかけているのだろうか」と受けとめることができるようになります。そして、「私はどう変わることができるのだろう」と新たな生き方へと踏み出すことができるのです。
(著書『人生を取り戻す──「まさかの時代」を生き抜く力』47~49ページより引用)
*2 グローバル・ジェネシスプロジェクト(GGP)研鑽
週1回、「魂の学」のフロント(最前線)の智慧を学びながら、プロジェクト活動(GLAでのボランティア活動)を通して、神理を体験的に理解できる、「研鑽」と「奉仕」が1つになった実践的な学びの場です。
*3 菩提心
「菩提心」とは、もともと仏教で「菩提=悟りを求める心」のことを指す言葉です。……私は、その精神を受けとめつつ、さらに広く、「菩提心」とは「本当の自らを求め、他を愛し、世界の調和に貢献する心」と定義したいと思います。「菩提心」は、自分を成長させ、完成させようとするだけでなく、それ以上に、その自分をはみ出して、他を想い、全体のためにはたらこうとする心なのです。……現在、私たちの時代が抱える巨大な問題──例えば、地球温暖化の問題でも、世界の貧困問題でも、格差社会の問題でも、究極のところ、この「菩提心」がはたらかなければ、本当の解決に向かってゆくことはできないのです。私たちの人生と世界が本当に輝くために不可欠のもの──。それが「菩提心」にほかなりません。
(著書『12の菩提心──魂が最高に輝く生き方』4~5ページより引用)
*4 青年塾
青年世代は、進学や就職、結婚など、人生の中で最も変化が激しく、誰もが、悩みながら自分の道を模索してゆく世代です。毎年5月上旬に2泊3日で開催される「青年塾セミナー」は、そんな青年たちに、本当の願いを発見し、人生で果たすべき使命に向かって歩み出す確かな手がかりを与えてくれます(参加対象:中学生から35歳までのGLA会員)。