時の羅針盤・244
時の羅針盤・244
心身を整える
高橋佳子
心身がそなえる自然治癒力
今年2024年も早半年が過ぎ去り、今月から後半の始まりとなります。そんな節目のときだからこそ、考えておきたいことがあります。
それは、私たち自身の心と身体の調和ということについてです。人間の心も身体も、それ自体が1つの調和を自ら調整する力──自然治癒力をもともと抱いているものです。
医学の祖とされる古代ギリシャのヒポクラテスは、身体自体に不調を治すはたらきがあり、「病気」とは失われたバランスを身体が取り戻そうとしている状態なのだと語っています。そして、「自然こそが最良の医者である」と言い、医者の主たる役割は、身体自体がもつ自然に治癒しようとする性質を助けることであると考えていました。
もちろん、自然治癒力は万能というわけではありません。その力がベースにあっても、様々な病に対して適切な医療的処置が必要であることは周知の事実です。
その一方で、ヒポクラテスが示した基本的な考え方は、大切なものであり続けています。自然治癒力は、私たちが抱いている生命力の一部として大切なはたらきを示すものなのです。
日々の中で心身を整える
しかし、そのような自然治癒力は、ただ漫然とした状態ではたらくものではありません。
むしろ、何ということもなく過ごしてゆく日常生活の中では、心も身体も、気がつくと歪(ひず)みを抱えてしまうということがめずらしくないのです。
どんなに心がけているつもりでも、私たちの心と身体は、本来あるべき調和の軸からわずかなズレが生じてしまいます。その小さなズレが少しずつ重なってゆくことで、心身の不調として現れてくるのです。
無数の刺激によって、私たちの心は、快苦の振動を繰り返しています。心に抱いたこだわりが高(こう)じてゆくと、私たちは正しい判断を下すことが困難になります。
また、今日(こんにち)、仕事や人間関係において、緊張状態を強いられる人は少なくありません。懸命に事態に向き合う人ほど、無意識に緊張を連続させ、それが身体のこりとなって蓄積し、体調が悪くなることがあります。
日々の中で少しずつ蓄積してゆく歪みが、あるとき閾値(いきち)を超えて、私たちが自覚できる歪みになるということなのです。
だからこそ、私たちは、自らの心と身体について、時にそれを「整える」ことを考えなければなりません。
そのためには、何よりもまず、自分自身の心と身体に向き合うことが大切になります。自ら意識して心と身体に相対し、その声に耳を傾けてみるのです。
自分の身体が何か不調を訴えていないか、心が何を感じているのか、率直に受けとめようとするのです。
また、瞑想によって、心の集中力を取り戻すということもあるでしょう。
そのとき可能であれば、自分が最もリラックスできる状態をつくることを考えてみてください。照明や室温、音楽などの環境も考えてみましょう。長めの入浴などによって、身体の緊張をほぐし、芯から温めることも、その状態をつくることに役立つでしょう。
できるだけストレスのない状態で、自分の心と身体に向き合う時間をつくってみるのです。
今年後半の始まりに向けて
自分自身の心と身体とゆったりと対話する──。そのような機会を折々にもつことで、私たちの心身の自然治癒力は大きく蘇ってきます。
その力を意識し、言葉と想いを通じてはたらきかけることで、ごく自然に心と身体の自然治癒力は目覚めてくるのです。
これから、今年の後半、下半期が始まります。
この期間に大きな目標を抱いている方もいらっしゃるでしょう。今まで経験したことのないような新たな挑戦も含まれるかもしれません。困難な試練と向き合わなければならない方もいらっしゃるでしょう。
心と身体を整え、もてる力のすべてを生かして全機(ぜんき)させ、日々に託されている青写真具現に向かってゆきたいと思います。
2024.6.28